量子探偵 ミンコフスキー密室/レムニスケート消失

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▼「量子探偵 ミンコフスキー密室/レムニスケート消失」

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架空畳 第20回公演 量子探偵 ミンコフスキー密室/レムニスケート消失
インタビュー vol.4 江花実里・岩松毅・江花明里

聞き手・記事 日野あかり(日本のラジオ)




架空畳の好きなところと作品の魅力

--架空畳の好きなところって、どこですか?

明里:うーん……岩松さんが何て言うか気になる。ずっと出てるし。
岩松:適当なことしか言わないと思いますけど……。

--岩松さんって、最近は架空畳以外の舞台には出てないですよね?

岩松:そうですね。昔は出てましたけど……7、8年前くらいから、もうやめました。なんとなくっていうのもあるし。働こうと思ったのもあるし。
で、改めて思うんですけど、架空畳の好きなところって、劇団始めた20年前からあんまり変わってないところ、かもしれない。精神性というか、取り組み方のテンションというか……そのへんが好きですね。
実里:ぶれない感じ?
岩松:まあ、ぶれたりはしますけど(笑)。でものらりくらりと、デラくんの作品をずっとやってるっていう感じですかね。

--これまでの中で、印象に残ってる作品ってありますか?

岩松:最近で言うと、ペーパーバックスタジオでやってる二人芝居のシリーズ。なんか、大人数が出てる作品より、二人芝居の方が、最近よく書けてるなって思ったりしますね。たとえば『彗星たちのスケルツォ』とか『ウリコヒメ』とか。
デラのセンシティブなところと、ちょっと嘘っぽいところ、その両方がうまく融合してて「あ、いいな」って。
明里:なんかこう「本当に書きたいことを書いてるな」って感じがするよね、二人芝居って。

--確かに大人数になると、どうしても構造的に制限が出てきますしね。

明里:うん、でも大人数の作品も好き。だってちゃんと、みんなに役割があるし、出番もあるし、見せ場もあるし。それって、すごいことだなって思う。そこが、私が架空畳を好きな理由のひとつかもしれない。

--なるほど。他の劇団だと、やっぱり「目立つ順」みたいなのが出てきちゃったりしますもんね。

明里:そうそう。でも架空畳は、本当に平等だと思う。一応メインはいるけど、ちゃんと全員に見せ場がある。みんなが活躍できる場をちゃんと用意してくれる。それがすごいなって。

--実里さんはどうですか?

実里:私はもう……デラの作品が好き。ほんと、それに尽きるかなあ(笑)。それだけ。
なんか印象悪いかな?(笑)でも、それです。



「もう一つの世界」への感覚

--小野寺さんの作品の、どういうところが好きですか?

実里:全体的に…「ここではないどこか」みたいな切なさが、すごく流れてる感じがする。
現実が現実じゃない、みたいな。なんか、デラの頭の中で遊んでる人たちに会える、みたいな感じがしてて。でも、その人たちが最終的には消えちゃうみたいな、寂しさもあるんですよね。
それが、自分の気持ちとすごく合う。合うっていうか……わかる、っていうか。私自身も、昔は特に、現実が現実っぽくない状態で生きてたことがあって。最近はだいぶ見えてきたけど。だから、それがフィットする感じがあるんです。そこが好き。

--デラさんにインタビューしたとき、「自分は“そうじゃない側”の人間」って言ってたんですよ。
ウルトラマンと怪獣がいる世界なら、怪獣側の気持ちで見てたって。選ばなかった側、メインじゃない側にいつもいる感覚。そういうのが作品にも滲み出てる感じがしますね。


実里:うん、でも怪獣も主役だよ(笑)。全員、メインストリーム。
岩松:なんか「寝坊した地球防衛軍」みたいな(笑)。最初に戦わなきゃいけないのに、寝坊して間に合わなくて。起きたら仲間は倒れてて、ウルトラマンが助けてくれて。「え、終わったんですか?」「今から行きます」みたいな。なんか、そういう感覚、ありますね(笑)。

--長く劇団活動をする中で、変わってきたなと思うところってありますか?

岩松:昔と比べると、だいぶデラくんは柔らかくなったなって思います。俳優の自由度が、増えたというか。ミザンス(注:立ち位置や動き)だけ決めたら、「あとはもう好きにやってください」っていう感じ。
前は結構、細かかったんですよ。それが今は、俳優が自由に動いてくれること込みで演出してる、みたいな感覚になってきたような気がします。
明里:最初の頃は、新しく参加する人にセリフの言い回しとかもかなり言ってたよね。最近もちょっとはあるけど、だいぶ減った気がする。
岩松:「どう読んでもいいけど、例えば……」みたいな感じになってきてますね(笑)。
実里:信頼が生まれたんじゃないかな。言わなくてもやってくれる、倍にして返してくれる、みたいな。仲間が増えたっていうか。
明里:デラにお友達が増えた(笑)。かわいい(笑)。



稽古場で育つ「色」と「自由」

--稽古場の雰囲気の話もぜひ聞かせてください。(注:座談会は4月下旬に実施)

実里:「消失」のほうが、きちきちっとしてる気がする。段取りが多いというか、まだ芝居が自由になる前の段階というか。
あと、架空畳に出るのが初めてとか、まだ浅い人が多いのもあって、「ちゃんとやらなきゃ」っていう空気があるかもしれない。ちょっと探ってる感じ。
明里:なんかピチピチしてない?メンバーが若いからかな?あんまり変わんないかもしれないけど、なんか、そういうフレッシュさみたいなのは感じる。
岩松:初参加の人って、最初はどうしても架空畳のやり方に戸惑うと思うんです。
まずミザンスをつけて、それに合わせて立ち位置や動きが決まって「このセリフで止まる」「ここで回る」「ここで動く」みたいな、段取りを入れていくんですよね。
だから、まだキャラクターを深めたり、役として芝居を入れていく段階には至ってないのかなって。これから芝居が入ってくるのが楽しみです。
実里:無色透明って感じだね、今のところは。
岩松:そう。台本が進んでいって、それぞれの人のキャラクターが見えてきたら、ようやく本当の稽古が始まるっていう感じになると思う。
明里:でも、なんか化けそうな気がするんだよね。

--見ていると、「密室」は結構破天荒さが面白い印象、「消失」はやっぱりSF色が強いですよね。どっちもSFはSFなんだけど。「密室」はなんか明るい、暖色系のイメージがあって、「消失」は青っぽい、メタリックというか。雰囲気も違うし、メンバーの空気感も、微妙に違うのかなって。

明里:うん、「密室」はちょっと大人っぽい感じ。私の印象ではね。
で、「消失」は若いというか、ピチピチしてる(笑)。
岩松:「消失」は、一応犯人が最初から提示されてるじゃないですか。「密室」は最初は誰が何をしてるのかよくわからない状態から始まる。
そういうミステリーとしての作り方も、逆になってて、それが面白いなって思いますね。
実里:「密室」と「消失」の違いでいうと、「密室」は、量子探偵が何も知らない、まっさらな状態で世界を探っていく。好奇心が原動力になってるから、明るい。
でも「消失」は、量子探偵がすでにすべてを知ってる前提で進んでいく。
どちらかというと上から解説するスタンス。そして、最後の事件になってしまって世界から見捨てられた、みたいな寂しさもあって、そのあたりの空気感も構造に出てるんじゃないかなって。


「覚える」から「演じる」まで

--話を聞いてて思ったんですけど、架空畳の台本って、単純に覚えるのが大変ですよね。動きも多いし、セリフも難解なことが多いし。
初めて出る人にアドバイスしてもらうつもりで聞きたいんですけど、どうやって覚えてますか?


みんな:どうやってんの?(笑)
実里:泣きながら、いっぱい読む(笑)。「ひい~、覚えらんないよ~」って言いながら読む。
明里:セリフに関しては、ほんとに読むしかないよね。ずっと繰り返して。
実里:うん。私はそうしてる。
明里:私も。……でも岩松さんは、すぐ覚えてますよね?
岩松:うーん、雰囲気でやってます。「こんな感じだったな?」みたいな(笑)。
実里:ざっくり入れて、動きと合わせてやってみると、体で覚えられるんだよね。そうすると入ってくる感じ。
明里:私は動画見る派かな。動画がないと無理。目も耳も、全部使って記憶するって感じ。

--やっぱり繰り返し、なんですね。でも、段取りがある中で、自分の個性を出すって、最初は難しくないですか? 「これ、出していいのかな?」みたいに迷ったり。明里さん、最初のころって覚えてます?

明里:覚えてない~(笑)。たしか最初は「カデンツァ」だったかな。
でもほんと、最初は段取り覚えるので精一杯だった。デラが言い方とかも教えてくれてた記憶がある。「カデンツァ」って、後半に向けてちゃんと盛り上がっていくようにできてて、だから感情は乗せやすかったかな。

--最初のうちは、感情を入れるのってすごく難しくないですか?構造も動きも決まってるし。

明里:うん、最初は難しい。でも、一回「これでいいんだ」って腑に落ちると、だいぶやりやすくなる。
そこにたどり着くまでが、それぞれ違うというか……タイミングと感覚なんだよね、たぶん。

--鍛錬ですね

明里:鍛錬……感覚?

--なんの参考にもならない(笑)。天才肌なんですね…。